バイクの左から追い抜きは危険?違反と事故リスクを解説

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バイクの左から追い抜きは危険?違反と事故リスクを解説

渋滞中や信号待ちの際、車の左側をバイクがすり抜けていく光景を見かけることがあります。このバイク 左から追い抜き行為は、ライダーにとっては時間を短縮できる手段かもしれませんが、多くのドライバーにとっては予測しづらい動きであり、ストレスの原因となりがちです。しかし、この行為は法的に違反となるのでしょうか?それとも運転技術の一つとして許容されているのでしょうか?

実際には、この行為が原因で重大な事故につながるケースも少なくありません。ライダー自身は「安全に配慮している」つもりでも、車のドライバーからは見えていない「死角」に入り込んでいることが多く、それが痛ましい結果を招くことがあります。

この記事では、バイクの左側からの追い抜きに関する交通ルール、それが「追い越し」とどう違うのか、そして具体的な危険性や事故のリスクについて、深く掘り下げて詳しく解説していきます。

ここがポイント
  • 追い越しと追い抜きの法的な違い
  • 左からの追い抜きが違反とされる具体的なケース
  • 左側すり抜けに伴う重大な事故のリスク
  • ライダーが安全のために取るべき行動

バイクの左からの追い抜き その定義と違反

バイクの左からの追い抜き その定義と違反
ドメスティックバイクライフ:イメージ
  • 追い越しと追い抜きの違い
  • バイクの左側からの追い抜きは違反か?
  • 信号待ちのすり抜けと停止線
  • すり抜けを左側から行う危険性
  • 左側走行が違反になる場合

追い越しと追い抜きの違い

まず、「追い越し」と「追い抜き」は、似ているようで道路交通法において明確に異なる行為として扱われます。この違いを理解することが、ルールの解釈に不可欠です。

「追い越し」は、道路交通法第2条第1項第21号によると「車両が他の車両等に追い付いた場合において、その進路を変えてその追い付いた車両等の側方を通過し、かつ、当該車両等の前方に出ることをいう」と定義されています。簡単に言えば、ウインカーを出して車線変更(進路変更)を伴う行為が「追い越し」です。例えば、片側1車線の道路で、前の車を追い越すために右側にはみ出し、再び元の車線に戻る行為がこれにあたります。

一方、「追い抜き」は、道路交通法上に明確な定義用語としては存在しませんが、一般的に「追い越し」に該当しない行為、つまり進路変更を伴わずに、そのまま前方の車両の側方を通過して前方に出る行為を指します。例えば、片側2車線以上の道路で、左車線を走行中に、右車線をより遅く走る車の横をそのまま通過していく行為は「追い抜き」です。

この2つの違いを、以下の表にまとめます。

行為進路変更(車線変更)道路交通法の定義具体例
追い越しあり第2条21項に定義あり右車線にはみ出し、前の車を抜いて元の車線に戻る。
追い抜きなし明確な定義規定はなし片側2車線で、車線変更せず隣の車より先に出る。

このように、車線変更(進路変更)の有無が、両者を法的に区別する最大のポイントです。バイクの左側からのすり抜けは、同一車線内で行われることが多いため、多くの場合「追い抜き」として解釈されます。

バイクの左側からの追い抜きは違反か?

それでは、本題であるバイクの左側からの追い抜きは違反なのでしょうか。

結論から言えば、進路変更を伴わない「追い抜き」行為自体を、直接的に禁止する法律の規定はありません。

道路交通法第28条では、「追い越し」は原則として右側から行うよう定められていますが、これはあくまで進路変更を伴う「追い越し」についてのルールです。したがって、同じ車線内で進路変更をせず、単純に車の左側を通過していく「追い抜き」行為は、厳密にはこの条文の対象外となります。

ただし、左側からの「追い越し」が例外的に認められるケースもあります。

左側からの「追い越し」が許可される例外

  • 前方の車が右折するために、あらかじめ道路の中央や右端に寄っている場合。(法第28条第2項)
  • 路面電車(軌道)を追い越す場合。(法第28条第3項)

ここで最も注意が必要なのは、警察官による現場での判断です。ライダー自身は「同一車線内の追い抜き」のつもりでも、停止している車を避けるために少しでもハンドルを切る動作が「進路変更」とみなされれば、それは「左側からの追い越し」と判断されます。その場合、「追い越し違反」(違反点数2点、反則金 二輪7,000円 / 原付6,000円)として取り締まられる可能性が十分にあるのです。

「車線変更していないから大丈夫」という自己判断は非常に危険です。わずかなふらつきや回避行動が「進路変更」と解釈されるリスクを常に認識しておく必要があります。

信号待ちのすり抜けと停止線

信号待ちのすり抜けと停止線
ドメスティックバイクライフ:イメージ

渋滞中や赤信号で停止している車の列を左側からすり抜けて、先頭に出る行為もよく見られます。これも法的には「追い抜き」の一種ですが、停止線の扱いによっては明確な違反となるため、細心の注意が必要です。

信号待ちの車列の先頭に出て、停止線を越えて停止した場合、その時点で「赤信号に従って停止する」という義務を果たしていないとみなされ、「信号無視」(道路交通法施行令第2条)にあたります。

また、停止線を越えなかったとしても、すでに停止している車列の前に強引に入る行為は、道路交通法第32条の「割込み等の禁止」に該当する可能性があります。「危険を防止するため」などのやむを得ない理由なく停止・徐行している車両の前に割り込むことは禁止されています。

信号待ちすり抜けに伴う主な違反リスク

信号無視(停止線超過): 違反点数:2点 反則金:二輪 7,000円 / 原付 6,000円

割込み等違反: 違反点数:1点 反則金:二輪 6,000円 / 原付 5,000円

※反則金額は2025年10月現在の標準的なものです。

「少しでも前に出て、スタートダッシュを切りたい」という意識が、思わぬ違反として検挙される原因になることを認識しておくべきです。

すり抜けを左側から行う危険性

法律違反になるかならないか、という議論も重要ですが、それ以上にすり抜けを左側から行う行為は極めて危険であり、命に関わるという事実を重く受け止める必要があります。

警視庁が公表している二輪車の交通死亡事故統計(令和5年中)によれば、都内の二輪車死亡事故の約4割が「右左折時」に発生しており、次いで「単独(転倒など)」が多くなっています。特に左側からのすり抜けは、左折する車からの死角に入りやすく、予測不能な動きに対応できないため、重大な「左折時」事故に直結しやすいのです。

例えば、2023年3月に東京都内で発生した事故では、左車線を走行中の大型貨物車の左側をすり抜けようとしたバイクが接触し、転倒したライダーが亡くなっています。トラックの運転手は「バイクに気づかなかった」と供述しており、これはまさに左側すり抜けの危険性を象徴する痛ましい事故例です。

ライダーは「行ける」と思っていても、相手からは「見えていない」という状況が常態的に発生するのが、左側すり抜けの最大のリスクです。

左側走行が違反になる場合

前述の通り、「追い抜き」自体に明確な規定はありませんが、バイクの左からの追い抜きに関連する走行が、他の違反に問われるケースは多々あります。

最も多いのが、道路の左端に引かれた白線(車道外側線)の外側、すなわち路側帯を通行する行為です。道路交通法第17条の2第1項により、路側帯は基本的に歩行者のためのスペースであり、軽車両(自転車など)を除く車両が通行することは原則として禁止されています(駐車や停車を除く)。もし路側帯を通行して追い抜けば、「通行区分違反」(違反点数2点、反則金 二輪6,000円 / 原付5,000円)となります。

また、路側帯ではない単なる車道外側線の左側(路肩)であっても、そこを恒常的に走行することは推奨されません。

左側追い抜きに関連する違反のまとめ

  • 通行区分違反 (法第17条の2): 路側帯や歩道を通行する。
  • 安全運転義務違反 (法第70条): 他車を驚かせるような速度ですり抜けるなど、危険な方法で走行し、他車に不安や危険を与える。
  • 追い越し違反 (法第28条): わずかな進路変更が「左側追い越し」と判断される。
  • 追い越し禁止場所での追い越し (法第30条): 交差点手前30m以内など、そもそも追い越しが禁止されている場所で行う。
  • 速度超過 (速度違反): 追い抜くために、法定速度や制限速度を超過する。

このように、左側からの追い抜きは、常に複数の違反と隣り合わせの危険なグレーゾーン行為であると言えます。

バイクの左からの追い抜きが招く事故

バイクの左からの追い抜きが招く事故
ドメスティックバイクライフ:イメージ
  • 左側は車の死角になりやすい
  • 左折巻き込み事故のリスク
  • 接触による転倒や当て逃げ
  • 事故になった場合の過失割合
  • トラブルの原因にもなる

左側は車の死角になりやすい

バイクがバイクの左からの追い抜きを試みる際、ライダーが絶対に理解しておかなければならないのが「車の死角」の存在です。

乗用車であっても、構造上、左後方はサイドミラーやルームミラーだけでは確認しにくい死角(ブラインドスポット)が存在します。特に車線変更や左折時には、Aピラー(フロントガラス横の柱)やBピラー(前席と後席の間の柱)がバイクの姿を隠してしまうことがあります。

これがトラックやバスなどの大型車になると、その死角は想像以上に広範囲に及びます。運転席が高い位置にある大型車にとって、車体のすぐ左側や直後はほとんど見えていないと言っても過言ではありません。JAF(日本自動車連盟)なども実験映像を公開していますが、大型車のドライバーからは、すぐ真横にいるバイクが全く認識できないことがわかります。

ライダーは「自分はドライバーの姿が見えている」と思っていても、相手のドライバーからは全く認識されていないケースが非常に多いのです。この「見えているはず」というライダー側の思い込みこそが、事故を引き起こす最大の原因となります。

左折巻き込み事故のリスク

左側すり抜けで最も多く、そして最も悲惨な結果を招きやすいのが、「左折巻き込み事故」です。

この事故は、以下のようなプロセスで発生します。

  1. バイクが、渋滞や低速走行中の車の左側をすり抜けて直進しようとします。
  2. その車が、コンビニや脇道に入るために左折しようとします。
  3. ドライバーは左折前にミラーや目視で後方確認をしますが、バイクはすでにミラーの死角に入り込んでいます。
  4. ドライバーがバイクに気づかないまま左折を開始。車体の内輪差(前輪より後輪が内側を通る)も発生します。
  5. 直進してきたバイクは行き場を失い、車の側面や後輪に接触・転倒し、車体の下に巻き込まれます。

特に交差点付近での左側すり抜けは、前の車が左折する可能性が非常に高まるため、自ら事故に飛び込むのに等しい、極めて危険な行為です。たとえドライバーが左ウインカーを出すのが遅れたとしても、結果として重大な傷害を負うのはライダー自身です。

接触による転倒や当て逃げ

重大な巻き込み事故に至らなくても、車とのささいな接触が転倒につながるリスクも常に伴います。

バイクは二輪でバランスを取っているため、非常に不安定な乗り物です。すり抜け中にバイクのハンドルやミラーが、停車中あるいは走行中の車のドアミラーやボディにわずかに接触しただけでも、バイクは簡単にバランスを崩し転倒します。

また、道路の左端は、雨水によって流された砂や砂利、埃、釘やボルトなどの落下物が溜まりやすい場所です。そうした路面の危険物を踏んでスリップし、単独で転倒するケースもあります。

さらに、もし車に接触して損害を与えたにもかかわらず、そのまま走り去ってしまえば、それは「当て逃げ」、すなわち道路交通法第72条に定められた「危険防止措置義務・報告義務違反」となります。

当て逃げ(報告義務違反など)の罰則

当て逃げは「物損事故」の扱いですが、事故現場から逃げたことに対するペナルティは非常に重くなります。

  • 行政処分: 安全運転義務違反(2点) + 危険防止措置義務違反(5点) = 合計7点。これにより、一発で免許停止処分(30日間)の対象となります。
  • 刑事罰: 「1年以下の懲役 または 10万円以下の罰金」が科される可能性があります。(法第117条の5第1号)

「バレないだろう」という軽い気持ちが、免許を失う結果につながります。

事故になった場合の過失割合

万が一、左側からの追い抜きや追い越しで事故が発生した場合、過室割合はバイク側に不利に働くケースが一般的です。

もちろん、車が左折する際の確認不足やウインカーの出し忘れも過失として問われますが、それ以上に「危険な場所(左側)から」「危険な方法(すり抜け)」を行ったバイク側の過失も重く見られます。

過去の判例に基づき、基本的な過失割合が設定されていますが、バイクが渋滞中の車列の横をかなりの速度ですり抜けていた場合などは、バイク側に大きな過失が加算されます。相手がウインカーを出していた場合や、車がすでに左折動作に入っていた場合などは、バイク側の過失が7割〜8割、あるいはそれ以上と判断されることも少なくありません。

過失相殺とは

交通事故では、どちらか一方が100%悪いというケースは稀で、双方に何らかの不注意(過失)があったとみなされることが多いです。その過失の割合に応じて、損害賠償額が減額されることを「過失相殺」と呼びます。バイク側に過失が多くつけば、たとえ怪我をしても十分な補償を受けられない可能性があります。

「違反ではない」という認識で運転していたとしても、ひとたび事故が起きた際には、経済的にも身体的にも大きな代償を支払うことになるのです。

トラブルの原因にもなる

トラブルの原因にもなる
ドメスティックバイクライフ:イメージ

左側からのすり抜けは、事故に至らなくても、他のドライバーとの深刻なトラブルの原因になりがちです。

車のドライバーにとって、死角である左側から急にバイクが現れる行為は、非常にストレスを感じ、「びっくりした」「危険だ」と不快に思うものです。それが原因で、ドライバーからクラクションを鳴らされたり、幅寄せをされたり、文句を言われたりするケースは少なくありません。

そこから口論に発展したり、最悪の場合、相手の怒りを買い、悪質な「あおり運転」(妨害運転)を誘発したりする可能性もゼロではありません。警察庁もあおり運転の撲滅を強化しており、妨害運転罪は非常に重い罰則(最大で懲役3年、免許取消)が科されます。

しかし、そもそもそうした危険な行為を誘発する引き金が、左側からのすり抜けにあるとすれば、ライダー側にも猛省すべき点があると言えます。安全面だけでなく、道路を共有する者としてのマナーや、余計なトラブルを避けるためにも、他車に不安や恐怖を与えるような運転は控えるべきです。

バイクの左からの追い抜きは避けるべき

この記事で解説してきたように、バイクの左からの追い抜きは、法律的にグレーゾーンであるだけでなく、事故やトラブルのリスクが極めて高い危険な行為です。最後に、本記事の要点をまとめます。

  • 追い越しは車線変更を伴う行為
  • 追い抜きは車線変更を伴わない行為
  • 追い抜き自体を直接禁止する法律はない
  • しかし左側追い越しは原則違反である
  • 追い抜きとみなされても他の違反に問われることがある
  • 路側帯の通行は通行区分違反
  • 停止線の超過は信号無視
  • 車列への割り込みは割込み等違反
  • 左側は車の死角になりやすい
  • 特に大型車の死角は非常に広い
  • 最も危険なのは左折巻き込み事故
  • ハンドルやミラーの接触による転倒リスクがある
  • 接触して逃げれば当て逃げになる
  • 事故の際はバイク側の過失割合が高くなる傾向がある
  • ドライバーとのトラブルの原因にもなる
  • 法律違反か否かに関わらず危険な行為である
  • 安全と命を守るためバイクの左からの追い抜きは避けるべき
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